子宮癌

宮本弘毅

(「広報くき」平成9年7月号 寄稿)

 

顕微鏡   子宮は「らっきょう」の様な形をしており、球状に近い部分と同部よりの突出部からなります。球状の部分が本体であり「子宮体部」と云い、突出部は「くび(=頸)」の様なので「子宮頸部」と云います。実際には子宮体部は鶏卵大の大きさです。子宮癌はこの両部に発生し、子宮体癌及び子宮頸癌と云われます。30年位前には子宮癌のうちの9割が子宮頸癌でしたが、最近の発症率はほぼ同程度と云われています。二つの癌は発生部位が異なるだけでなく、顕微鏡で見た像も全く異なり、胃癌と皮膚癌が全く別の臓器から発生する位に異なります。子宮体癌は胃癌に類似し、子宮頸癌は皮膚癌に類似します。
 

コルポスコープ   興味深い事は、癌の発症率と婦人歴に種々の関連があることです。終生修道尼であった人の死亡診断書に子宮頸癌なる死因の無い事は伝説的に有名な話です。一方生涯にわたり肌を合わせた男性数が多い女性に、子宮頸癌の発症頻度が高いとも云われます。子宮体癌に関しては、最後に分娩してから7年間に発症する事は皆無に近いと云われています。交接経験のない人、出産経験のない人、月経が不順な人等は、そうでない人に比較して、子宮体癌の発生頻度が高い事も統計的に裏付けられています。年齢的には高齢化と共に子宮体癌が増加傾向にあり、閉経後は顕著に子宮頸癌より増加します。

   昨今、mm単位の前癌状態での早期発見も可能となり、死因を子宮癌とする患者さんの数は激減し、私が婦人科医となった30年前とは隔世の感があります。死因癌のワースト10から子宮癌が消えて10年近くになります。この要因に子宮癌検診の普及もあげられます。頸部のみの子宮癌検診に終わる事は、「片方のお乳」のみを診察して乳癌検診を完了するのと同等です。癌を「異常なし」とする事の多い簡便な「自己採取法」は、早期発見チャンスの「自己放棄法」でもあり、婦人科学会では即刻の廃止を提言しています。

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